給料は上昇見込みがありません

内緒は駄目だからね、聞いてる?大体幾らぐらい出るかしら、まだ若いし結構出るかもね。何も答えず沈黙を貫く、しゃべりたくなかった。

ペラペラとめくりつつ続ける。貯金等も少しはあるはず、離婚時に分けた退職金も、残ってるはずよね。特別に趣味もなかったはず。無駄使いしてへんと良いけど。

こいつに持たせたくない。あんたは独身で分からないかもしれんけど、家庭を持つって大変よ、翔も来年中学受験だし、塾の費用もバカに出来ません。

下のあずさもピアノ習い色々必要。が、旦那の給料は上昇見込みがありません。何やらすごく嫌な気分。話はまだ終わりません。にしてもお父さん、こんなに早く逝っちゃうとはね。

もうちょっと我慢したら良かったのに、相続人私達二人だけよ。お母さん権利がなく、もらえません。きっと悔しがるわね。

もういいだろ、汚ねー話ばかり!姉の手から引ったくるように取り上げた。驚いたように俺を見てから、ちょっと睨んだ。

親父が、はずみで散らばった写真の中で笑っていた。